「いま札幌に必要な〇〇」クロストーク@北海道教育大学札幌駅前サテライト

三上 では始めたいと思います。2019年度の演劇創造都市札幌プロジェクト、第一回目のセミナー&クロストークです。本日進行役を務めさせていただきます三上と申します。本日はこんなに沢山の方々に来ていただき誠にありがとうございます。私共のプロジェクトでは年に3回程度のセミナーを開催しているんですが、いつもは文化芸術関連の方や、演劇関係の識者をお招きしていたのですが、今回は違うジャンルの方からお話を伺おうという事になりまして、札幌で今注目を集めているNoMapsというイベントの実行委員会の事務局長の廣瀬岳史さんをお招きすることが出来ました。前半はその廣瀬さんから話題提供という形で、NoMapsとはどういったものなのかというお話を頂き、後半は、北海道演劇財団芸術監督の斎藤歩さんにも加わっていただいて、クロストークという形をとらせていただきます。
皆さんのお手元に案内を配らせていただきましたが、皆さんからのご質問を「スライドゥ」というサイトにスマホでどんどん打ち込んでいただけるようになっています。スクリーンに皆様からのご質問やご意見をもとにクロストークを行う形をとらせていただきます。皆さんが質問やご意見を打ち込んだら瞬時にこちらのスクリーンに映し出すことが出来まして、その質問に対しても「いいね!」というリアクションもできたりしますので、皆さん、ぜひスマホで感じたことや疑問に思ったこと、聞いてみたいことなどを打ち込んで、ご参加ください。
では廣瀬さん、お願いいたします。

廣瀬 NoMaps事務局長の廣瀬です。いつもは産業系の集まりで話すことが多いんですが、演劇に関して言うと、ほとんど縁が薄いので、ちょっと緊張しています。演劇には年に1~2回、友達に誘われて行くぐらいです。皆さんの流儀とは全く異質な話になるかもしれませんが、受け止めていただければと思います。
早速、ノーマップスについてのお話をさせていただきますが、ノーマップスのことを知らなかった方はいらっしゃいますか?(挙手)3分の1程度ですかね、ちょっと安心しました。ノーマップスっていうのは「北海道から切り開く地図なき世界」。地図にない領域を自分の手で切り開いてゆくことを目指していますが、土を耕し木を切り倒して土地を開く開拓ではなく、今風の、誰もやったことのないことを自分でやって、ビジネスをしたり、新しい社会を切り開く。そんな方々がたくさん集まるような機会を作って、北海道の人だけじゃなく、道外から現代のフロンティアスピリッツを抱いた方々にも集まっていただき、いろんな話をしてもらって、また、刺激を受けたい人たちにも、想いや考えを受け取ってもらって、北海道の人たちみんなが、もっとクリエイティブに、イノベイティブになっていただけることを目指したコンベンション事業です。
北海道をもっと面白く。もっと住みやすく、もっと働きやすく。こういった願いが北海道で実現するための一つのきっかけになりたいと思っています。
札幌クリエイティブコンベンションっていう別名なんですけど、クリエイティブを起点としてよりよい社会をつくる人たちが札幌に集まって、いろんな刺激を受けて、また次の現場に旅立ってゆけるような現場を目指しています。
「クリエイティブ」って何だかわかんない?とか、音楽・映像、デザイン?と聞くと、ん?と思う人もいると思うんですね。僕は、もっとその「クリエイティブ」とか「クリエーター」という意味を広く考えていまして「新しい価値を生み出す人」をクリエイターと呼んでいるんです。おいしい作物を作る農家も、今までない方法を使っていたらクリエイターです。料理もそう。狭義のクリエイターではなく、広義のクリエイターを北海道に誕生させる。そんな活動を増やしてゆきたいんです。そのために北海道を「もっと面白く」「もっと住みやすく」「もっと働きやすく」という3つぐらいのテーマに絞って活動をしています。
「もっと面白く」について
北海道の人が、新しいことにチャレンジできる、そんな文化になるための取り組み。生み出す取り組みを支援したい。
一つの例として「北海道移住ドラフト会議」というのがあります。ノーマップスに近い仲間が始めたことです。どこの街も若い人を呼び込もうとして頑張っていますが、それを野球のドラフト会議のような方法で行うイベントです。自治体や会社が球団。移住したい人が選手。プレゼンして互いの希望を知り合って、くじ引きで移住先受け入れ先を決める。このような新しい取り組み、これもクリエイティブですね。
サッポロビールの取り組みに「ほっとけないどう・北海道」というのがあります。若者のチャレンジしようという気持ちを後押しする取り組みで「ほっとけないバー」というバーを設けて、そこでビールを飲むと、その金額の半分が若いチャレンジャーの取り組みに寄付される仕組みです。毎月3本の登録制で、選抜された企画がバーに並んでいます。気軽に互いを助けたり応援したりできる。クラウドファウンディングよりももっとリアルに支援者と繋がれるという点が面白いです。こんな活動をNoMapsが裏でサポートをしています。起業する若者が増えることにつながるかという思いです。
若い人たちと話すと、「やりたいけど不安だ」という声が多いです。一歩踏み出せず不安に向き合ってしまう。そこで何とか一歩踏み出せる環境を作りたい。変えること、変わることを恐れず、後押しすることも恐れず、まずやってみるということをNoMapsは支援しています。
次に「もっと住みやすく」というテーマについて
日本全体の課題が凝縮された北海道は課題先進地とも言えます。こんな土地に先端技術で、生活を改善することを期待して、北海道を実証実験の聖地にしようと様々な取り組みを行っています。車の自動走行実験を街中でやりました。これは先進的な取り組みでした。買い物実験では、アバターと呼ばれる分身ロボットを登場させました。これを札幌から操作して、東京の百貨店で買い物をさせるという実験です。未来の買い物行動の実験ですね。タクシー配車アプリもそうです。人工知能を使ったタクシーの配車実験ですとか、こんなことのサポートもNoMapsは行っています。介護・福祉・医療、様々な問題を先端技術で解決すべく、行政とも連携をしながら技術を磨き検証をして、社会に落とし込むお手伝いもしています。スマホもあっという間に当たり前になっていますが、登場からたったの10年です。先端技術が社会に浸透するのは早いんです。先端技術で暮らしが劇的に良くなるということも実は多いと思っています。
「もっと働きやすく」というテーマについて
近年の、北海道の悩みの一つに、理系の学生が東京に流出してしまうという問題があります。一方東京の若い人は「機会があれば帰ってきたい」と思っているようなんですね。しかし、仕事がないとか、お給料が安いなどの理由で帰ってこられない。もっと新しい産業が生まれれば、北海道でも働ける現場が生まれるのに。そこで基幹産業である、農業・漁業・観光、こうした産業を先端技術で魅力的にする取り組みも行っています。牛の母体管理をITで行うことで、魅力的な農業にする取り組みですとか。(十勝ファームノートの例)もっと農業の労働効率が上がり、農家の負担も減り、若者にも魅力的な農業になるといいなぁと。
十勝大樹町のロケット発射実験が話題になりましたよね。民間のロケット会社です。今年の5月に初めて民間の力で宇宙までロケットを飛ばすことに成功しました。この会社は安いロケットを宇宙まで飛ばすということを頑張っています。安く衛星を宇宙に打ち上げることをビジネスにしようとしているんですね。地元のホームセンターで安い部品を買ってロケットを作っています。NoMapsが映像を作ったりするので関わっているんですが、宇宙ビジネスというものが、北海道の新しい産業になるのではないかと考えています。ロケットを飛ばせる会社が北海道にあって、衛星を飛ばせれば、それを活用できる産業(農業・漁業)が北海道にはたくさんあるからです。衛星データを活用できるという事に繋がるからです。十勝に衛星を作る会社があり、衛星データを活用できる産業があれば、十勝に産業のクラスターができるのではないかと考えるからです。宇宙産業を北海道で発展させたいんです。今はまだないですけど、この先、新しい仕事や産業を北海道に作り出せるのではないかと考えているのです。何かの試算で、65%ぐらいの小学生の子供は大人になった時に、今はない仕事に就くという研究結果があります。そんなことが北海道にはたくさんあるのではないでしょうか。新産業で新しい働き方を北海道でできる。そんなことをお手伝いできればうれしいです。

ざっと、ここまでが、NoMaps全体の様子ですが、もっと細かく説明するとNoMapsというコンベンションに集まった人たちは勿論、それ以外の北海道で働く人たちも、もっともっと、クリエイティブ・創造的な意識を持つことで、それぞれが地図に描かれていない新しい領域に向かって、一歩踏み出して、今はまだないビジネスとか、働き方とか、それこそ、お芝居などを生み出してくれるといいなぁと考えています。

NoMapsという名前は元々は、ウィリアム・ギブスンというアメリカのSF作家が1980年ごろに、今よりもうちょっと先の未来をイメージした小説を書いた人なんですが、その人を追ったドキュメンタリー番組のタイトルが「NoMaps」だったんですね。地図なき領域を開拓したい。開拓しようという想いを込めています。

NoMapsがやっていることは、コンベンション事業です。
先端技術や新しいアイデアをベースにして次の時代の価値観・文化・社会の姿を提案するようなコンテンツをテーマとして5つの事業をやっています。
カンファレンス:セミナー形式だったり、ワークショップだったり、プレゼンテーションをして投資家から資金を集めるコンテストだったり、とにかく集まってアイデアを出し合う事業がいくつもあります。
エキシビション:展示会ですね。チカホを使って先端技術の展示会を行っています。新しい技術に触れて、体験して、頭の中をアップデートしてもらうことを狙っています。
そしてイベント:参考にしたのはサウスバイサウスウエストというコンベンションなんですが、IT、音楽、映画というクリエイティブなジャンルを混ぜたようなコンベンションだったので、クリエイティブなコンテンツを一般の方にもエンターテイメントとして楽しんでいただく活動もしています。札幌国際短編映画祭や、音楽ライブサーキットとして市内のライブハウスをサーキット形式でつないで、いろんなジャンルの、いろんな世代の音楽を自由に聞いて回れるイベントです。
ミートアップ:これは交流の場をつくることなんですが、これが一番やりたいことです。お互いに刺激を受けて新しい取り組みに踏み出してほしい。これがこのコンベンションの大きな目的です。なので、カンファレンスも、エキシビションも、イベントも、作ってる人と作ってるものに興味を持った人が集まって、同じ場で話したり飲んだり、仲良くなって、一緒にやろうとか、もっとこうしようとか、そういうことが同時多発的に起こって、こういうイベントを契機にして新しい何かが生まれる。そんな場になればいいなぁと思って、実はこのミートアップの事業に力を入れています。早い話が飲み会なんですけど、ひたすら飲んで話して何かが生まれるという発想です。
エクスペリメント:実証実験ですね。

以上、この5つをビジネスコンベンションで回しているのがNoMapsです。

では、NoMapsって誰がやってるの?
という疑問に対しての答えですが、産官学の連携でオール北海道体制の、実行委員を組織してやっています。初音ミクの伊藤さん、ウエスの小島さん、IT企業の社長、札幌市・経産局・大学、などが連携をしています。パートナーとして地元のメディアやビジネス関係の業界団体にも入ってもらって、オール北海道体制で、「クリエイティブ」「新しいもの」「イノベイティブ」などをキーワードにして、これらを起点にして新しいことを始めたいという取り組みの数々です。地の地域でも、クリエイティブをテーマにしたイベントはあるんですが、北海道は官公庁ががっちり組んでくれていることが大きいです。まあ、官公庁と一緒にやることは大変で、まとめるのも苦労するんですが、何とかやれているという点で北海道は珍しいとも言えます。
今年は10月で、3回目。2016年をゼロ回目と位置付けました。札幌市内のいろんな会場を使って、先ほど紹介した5つの事業を行います。今年はロゴも新しくして、ビジュアルも山を意識したものにしました。今年3回目ということを契機に、コンセプトの見直しをしてましてNoMapsってベースキャンプだよねって言えるようにしたいと思っています。ベースキャンプって山に登る前に、装備や体調を整えたり、情報を整理したり、そういう場ですね。我々が考えているノーマップスの役割は、そこに来る方々の目指す場所は千差万別ですが、そこに上る前に、情報を得るとか、仲間を得るとか、装備を充実させるとか、そんなベースキャンプになるというのがイメージです。未来という名の最高峰を自分の中に設定しようという呼びかけを行っています。
具体的な中身についてお話します。
「カンファレンス」としては、10月16~18日、30セッションのテーマでカンファレンスを行います。有識者・経営者の方が来ます。メディアラボの副所長とかも来ます。マクアケというクラウドファウンディングの中山さんとか、酪農関係の小林さんとか、AIの先生とか、様々です。技術だけではなく、マーケティング・教育・地方創世もあったり、なんでもいいけどアップデートしたい人がいたらセッション作ろうぜっていう感じで、いろんな人が交わるようにしたいと思っていまして、必ずしもテクノロジー一色ではありません。東京だと、ブロックチェーンだけだとしても、一日せいぜい一つだけのセッションしかできないことが多くて、その周辺の人しか集まれないことが多いんですけど、札幌の規模であれば、ブロックチェーンをやっている人と自在型教育をやっている人がうまく混ざるんじゃないかというのが、札幌の魅力でもあります。いろんなものをセッションして最後に飲む。この、「飲む」のがとても重要です。チカホでの展示も、創世スクエアにも広げて先端技術の展示もやります。短編映画祭もぜひ見てください。1回見たら面白さがわかると思うので。
音楽では、ジャンルを超えたライブをやりますし、厚別のプラネタリウムを使って、ドームムービーの上映会なども実施します。交通局さんが地下鉄の整備場を使っていいよっていうので、そこをライブ会場にしようかみたいな流れで、イベントも企画しています。いろんな人が来られるように、来たら飲むということで進めています。
実証実験では、関係省庁に相談しながら、企業同士の競争プラットフォームもやったりとか。
以上、こんな感じの事業です。
パスを販売していまして、定価8千円。北海道の人はこの値段で、お金を払って情報を取りになかなか来ないですね。あ、あと、服はリラックスしてきてほしいです。

今日のテーマは「今札幌に必要な○○」ということで、この後斎藤さんといろんな話ができると思うんですが、ノーマップスの流れで言うと、新しく変えるということがやっている意味だし、使命なので、そういうムーブメントが札幌に生まれるといいなぁと思っていますので、冒頭、三上さんが紹介してくれた「スライドゥ」に皆さん、どんどん質問を挙げてください。スマホでドンドン何でもいいので挙げてください。匿名で発言できるのでご安心ください。このスライドゥに上がってきた質問や、ご意見をもとに斎藤さんとのお話を進めて行きたいと思っていますので、ここでいったん私の話は区切りたいと思います。どうもありがとうございます。

三上 どうもありがとうございました。セッティング替えをしている間に、スライドゥ、ぜひお使いください。打ち込んでください。会場からの疑問とか、想いとかを汲みながら、お話していただきますので、どんどん打ち込んでくださいね。ああ!どんどん上がってきましたね。

斎藤 こういう無責任さがいいですよね。

三上 では斎藤さんにも入っていただいて、クロストークを始めていただきますね。

斎藤 よろしくお願いします。私はつい先日廣瀬さんと初めてお会いしました。NoMapsについては、去年、一昨年ぐらいからちょっと気になっていて、何をしているんだろう?とは思っていたんですが、参加したことは無かったんですが、今日初めてお話を伺って、感じたことから喋りますね。今のお話の中で、札幌で仕事をしたいんだけど、東京へ行ってしまう人材が多いというお話がありました。私も札幌で演劇を始めたんですが、俳優という仕事をある規模で始めてしまうと、やっぱり東京にいなければならなくなってしまって、2016年までの16年間東京にいたんですね。3年前にやっと札幌に帰ってくることが叶ったんですね。帰ってきた当初は大変な環境で、これは無理かなぁとか思った瞬間もあったんですが、3年でようやく何とかなりそうな、やって行けそうなところまでは来たんです。そんな今、私が廣瀬さんのお話を伺っていて、廣瀬さんご自身が、札幌にいて相当思い通りにならないことを感じてフラストレーションをお感じなのではないかなぁと感じたんですが、個別の問題では色々あるとは思うんですね。札幌には「挑戦」が必要だという問題提起が、今日のお話にはあったと思うんですが、廣瀬さんが今札幌で、このままでは、ここから先に進めないと感じているからこそ、NoMapsをやってらっしゃると思うんですが、具体的にどんなイライラを感じてますか?

廣瀬 私自身が以前シンクタンクにいて、官公庁から依頼を受けて仕事をしていた立場にあったので、あまり偉そうなことは言えませんが、行政に頼っている感じがどんなジャンルにもあって、民間が産業構造上やはりあまり強くなくて、自分で何か新しいことをやろうという人たちが、札幌土着の人たちの中にあまり多くない、外から来た人たちの方が元気があるという現実が、寂しいなぁとか、負けたくないなぁとか感じてます。すごくそこが強いですね。
斎藤 僕も同じことを実は感じています。僕は北海道で生まれたものの、育ったのは本州のあちこちなんですね。で、北海道にある種のフロンティアスピリッツのようなものを感じたり、幻想を持って北大を受験してしまったりして、今に至るんですが、北海道の人たちって実は、それほどフロンティアスピリッツとか新しい領域に踏み出そうとする人に対して、それほど寛容じゃないんですよね。いやでもね、20年以上前までは北海道知事を選ぶとか、国政に代議士を送り出す道民たちの判断て、こんなじゃなかった気がするんですけどね。こういう土地だったのかなぁ?近年特にその傾向が強まっていると感じます。演劇創造都市札幌プロジェクトを最初に起こした私の先輩たちが「札幌演劇シーズン」というのを始められて、それを今僕は引き継いでいるんですが、最初は、民間だけで始めたんですよね。2012年にスタートした時に、民間の会社の社長さんたちが「我々札幌の演劇人が!」って仰ったのを見て、僕も「これはやばい」って思って、割と無理をして東京から札幌に通いながら演劇シーズン初期には作品を出し続けました。かなり冒険的だったんですね。でも、もう7年も続けていると、やっぱりどんどん行政に頼る雰囲気が強くなってしまっているんじゃないかって感じていて、もっと自分たちが先に進んで行って、あとから行政が追随して支えてもらうとか、応援してもらうスタイルにならないかなぁって思っています。

廣瀬 そうですね。ああ、結構スライドゥに質問が挙がって来てますね。「いいね!」マークをクリックすると、その数もカウントされて「いいね!」が多い意見とか質問が上に上がってきますんで、それも活用してくださいね。では上の方にあるご質問についてお話してみましょうか
「演劇はどこか閉鎖的な印象を持つが、NoMapsとのコラボで劇場に足を運ばない一般層を取り込むことは可能か?」

廣瀬 演劇に関わっている方って、演劇にしかかかわっていないんですかね?例えば今日ここにいらっしゃる皆さんの中で、「演劇以外のコミュニティにもかかわっているよ」って方はどのぐらいいらっしゃるんですか?実はこの辺なのかなぁって思うんですよね。どれぐらい自分の関わるコミュニティをバランスよく増やしている人というか、増やすことに興味を持っている人がいるかどうかが、閉鎖的かどうかにかかわっているんじゃないかと思うんですよね。

斎藤 演劇を創っている側の人って、圧倒的に余裕がないんですよね、経済が。演劇を創る時間以外に、生活を支えるために何らかの仕事をしなければならない。一日8時間~10時間、演劇とは関係ない時間に人生を割かなければならないという事情もあって、創る側の人間には、その余裕がないという現実があることはあります。大部分がプロフェッショナルではないのでね。閉鎖的にならざるを得ない事情は確かにあるんです。皆友だちにチケット売るんですけど、続けていると友だちはどんどん減りますし、そうすると、演劇人同士でチケット売り合ったりしててね。気の毒ですよね。

廣瀬 今回の場が、何かのきっかけになるといいなぁと私も思っていて、私は演劇に界隈性は持っていませんが、NoMaps以外にもいろんなコミュニティを持っていて、いろんなジャンルの人を演劇のコミュニティに連れてくることも考えられますし、逆に演劇の人にもNoMapsに来てもらうという事も期待していて、こういう網の目を増やす活動を、演劇の人たちにもやってもらえたら嬉しいです。とはいえ、皆が皆やる必要はないと思うんですよ。何というか、外枠の人?本当のコアな方々は演劇に没入すべきなんですけど、いろんなコミュニティを行き来している人たちが上手くつながって、その境界線をグレーにしてゆく必要が絶対にあって、これはNoMapsも同じなんですよね。どうしても外から見ると、映画とか音楽とか先端技術だけに見られがちなんだと思うんです。NoMapsの人間も、思いもよらないところとつながって、例えば、教育とか、介護とか、演劇とか、そういうことが今必要だと思っています。何が起こるかわかりませんが、やってみないと何も起こりませんしね。その役割を誰か担ってよじゃなくて、自分でやってみようって言う人がどれぐらい増えるかだと思います。

斎藤 演劇で言うと、俳優とか演出家とか劇作家にもそういう視点は必要ですけど、やっぱり、今の札幌の現状で言うと、まずはプロデューサーですね。制作者もそうだし、劇場の人もそうですね。

廣瀬 NoMapsに対して「意識高めの人しかいちゃいけないんでしょ?」みたいなことをよく言われるんですよ。そんなことないんですけど、外からはそう見えちゃってるみたいなんですよね。やっぱり、演劇って言うコミュニティもそういう界隈なんですかね?「演劇」って言うハードル、結構高いと思われてますよね。

斎藤 そうですね、ただ、今の札幌の演劇って、東京から眺めていたんですけど、独特の進化を起こし始めていて、東京では創れない演劇が札幌では創れるんじゃないかと感じていたんです。東京って、今演劇が先鋭化していて、よっぽど尖がらないと目立たないんですね。何だか数もいっぱいあって大変なんですね。ハードルをどんどん高くしてるんです。日本の演劇には、まだまだ、新しく演劇にフラッと入って来る人にとって、もっと呑気にドアを開けて入れるような店構えが必要なんです。今札幌にはオーソドックスな店構えを整えて普及させるにはちょうどいい環境というか、サイズなんじゃないかと思っているんです。

廣瀬 僕は芝居に関心は無い方なので、僕が芝居に行くときは、誘われた時なんです。まだ多くの人がそんな感じだと思うんで、友達増やせよってことだと思うんですよね。閉鎖的にならないためにはね。
「NoMapsと演劇のコラボは地域活性化につながりますか?」

廣瀬 って挙がってますけど、私たちが絶対に貢献できるとは言えませんが、可能性はあると思います。NoMapsの場でやる意味のある演劇ってものがあるのかもしれませんし、そういったことを今後一緒に考えられると嬉しいなぁと思います。

斎藤 でもね、時々乱暴な相談をされるんですよね。「町興しのために、ここでなんか演劇やってよ」みたいな。でも、できないんですよ、そう簡単に演劇は。皆さん割と低予算で丸投げしてくるんですよ。ただね、僕らの側ももうちょっと研究して、「できるよ!」って言ってみて、やってみることも必要かなぁ。

三上 スライドゥに結構質問が挙がって来てますね
「実際に市民・若者が新しいことをしたい、北海道を変えるクリエイティブな活動をしたいという方が、NoMapsさんに後押しを願う場合、どうすれば?」

廣瀬 つまり「NoMapsは何をしてくれるの?」って言う事だと思うんですけど、すべてに対してきめ細やかなサポートをできるというわけではないんですが、一旦持ち込んできてさえくれれば、それがNoMapsを盛り上げるのか、社会のためになるのか、いいなと思えるものがあれば、何かしら考えます。すごく大雑把なんですけど、場所を創るとか、お金を創るための事業申請をするとか、スポンサーを探すとか、一緒にできる協力者を探すとか、出来るだけ協力します。お手伝いします。今私が関わっている案件ですと、学生さんなんですけど、高校生があるイベントをやりたいって言ってきて、「じゃあやろうよ!」って色んな大人をくっつけたり、相談するにはタダですし、面白いと思ったら一緒にやろうよっていうスタンスで、お手伝いしています。なので、ガンガン言って来て欲しいですね。こういう人はいい、これはダメとか、実はあまりないんで。します。言い切っちゃいますここは。なので、ください。

三上 さっきの「移住ドラフト会議」もそうですか?

廣瀬 そうです。うちはちょっとしたサポートで場所を作ってるんですけど、楽しそうだから乗っからせてよって乗っかってる部分もあります。

三上 この次の質問というか、依頼について、お二人、いかがですか?
「【東京で創れないものを札幌では創れる】をもう少し聞かせてください」

廣瀬 NoMaps的なことで言うと、東京で創れないという事ではないんですが、キャパが丁度良くて、いろんな分野を混ぜやすいということですかね。後距離も近いし、簡単に会えるとか。東京でやられている仕事のスピード感にはかないませんが、人と人とがつながるスピード感は早いですね。規模がちょうどいい。派閥的な何かがない。足の引っ張り合いも他に地域に比べて少ないですね。

斎藤 演劇のことで言うと、東京ってものを創るために必要な基本的な体力が札幌よりはるかに必要なんですね。不動産価格が全然違いますから、稽古場を維持するだけで一月物凄い金額ですしね。1日2万円とか普通にかかりますので、60日借りたら120万円ですよね。劇場を押さえるのも大変ですしね。そこで暮らす人たちが稽古場に通う通勤距離も札幌の2倍以上あるんじゃないでしょうか。それでもやっている体力や根性が東京の演劇人にはあるんですけどね。そのことで失っているものもあるんじゃないかって思っていて。逆に札幌はすごく呑気にのんびりしていて、もっと楽にできるんで、そこまでのガッツがなくても楽にできちゃうって言う不満もあって。だから、東京でやって行けるぐらいガッツというか体力や意欲のある連中が、この北海道に来て、滞在して創るということで、モノが良くなる。また他の作品との競争に関してとか、評価という点に関しても、おかしな尖がったところで評価を競うのではなくて、もっとピュアで落ち着いた評価に向かうことが出来ると思うんです。だからヨーロッパ演劇の正当な作品を、おかしな色付けと演出で見せ合うんじゃなくて、その作品の持ち味をきちんと描いてお客さんに観てもらうためには、北海道で創るのが程よいと思っていたんですね。北海道でやれることって言うのはそういう事なんじゃないかと思い始めていて、人間にとって必要なサイズのものを人間に向けてクリエイトできる環境なのではないかと。これからはそういうプロダクト・商品が必要とされる時代なのではないかと。オリンピックが決まった瞬間にもう、僕は逃げなければと思いましたね。あれ以上人が増えたらどんなになっちゃうんだって。

廣瀬 東京にしかないもの、都会にしかないものというのは勿論あるんですけど、全く別の軸で眺めてみると、暮らしやすさ、生活の幸せさというものがあって、だからこそできるものがここにはあるんだと思うんです。

三上 今のお話に繋がるのがこの一番上の質問じゃないかと思うんですけど、これについては?
「東京では好きなことをやって生きていけるけど、北海道では難しい?」

斎藤 いや、東京にはねえ、好きなことをやって生きて行ける環境はないですよ。何をやりたいのかにもよりますけど、北海道は貧乏だっていう事実もありますけど

廣瀬 土地によって、好きなことをやって生きて行けるかは、変わらないんじゃないかと思っています。環境の問題は勿論若干影響しますけど、やるかやらないか。やろうとする気持ちはどこにいても持つことが出来るのではないかと思います。北海道だからできない理由なんてないと思いますけど。環境づくりはしていった方がいいとは思いますけど

斎藤 話は飛びますが、2016年の2月に雪まつりの大雪像で観光客相手にシェイクスピアの「冬物語」を見てもらうという事をやったんですけど、折角海外からのお客さんも多いんで、日本語での上演に外国語の字幕を付けようという話になった。5か国語、ところが、昼も夜も野外の大雪像ステージにプロジェクターで字幕を投影するとなると、かなり大きなプロジェクターをレンタルする必要があって、それだけで物凄いお金がかかるので、諦めようかという話まで出たんですけど、諦めきれなくて、皆で考えたことがあったんです。若いスタッフって、ほらITとか、パソコンとか詳しいから、あいつらに何か考えろ!ってね。そんな時、私は東京と札幌を行ったり来たりしていたんですが、千歳空港で飛行機を待っている間、目の前を沢山の中国人の団体が行ったり来たりするんですけど、彼ら常にスマホを見てるんですよ。それを見てて「あ、これだ!」って思って、当時の演劇財団の若いスタッフにすぐにメールをしたんです。「字幕をプロジェクターで投影するんじゃなくて、インターネットとか、ツイッターとか、俺にはよくわからんが、そんな手法で、舞台上の台詞とシンクロさせて配信する方法を考えろ!」ってね。そしたら彼らが「チャットサイト」というのを考えついて、無料のサイトで、あらかじめ用意しておいたコメント、それがつまり台詞なんですけど、それを、オペレーターが舞台を見ながら同時にどんどんアップしてゆくという方法でした。割とうまくいったと思っていたんですが、やはり問題もあったようで、観光客って、スマホで写真を撮りたがるんですよね。ところが、字幕をスマホで観ていると写真が撮れないとか、冬なので、外でずっとスマホを見ていると、すぐに電池切れになるとか。あの時、うちの若いスタッフだけじゃなくて、例えば廣瀬さんのような人に相談したら、もっと別な方法も見つかったり、その研究から別のものが生まれたりとかしたのかもしれないなぁと、今日、廣瀬さんのお話を聞いてて思いました。

廣瀬 私自身もテクノロジーがわかっているわけではないので、私の所に来た情報をどこかに出したら、何が起こるかわからないので、考えが広がるじゃないですか。共感してくれる人が現れるかもしれませんし。

斎藤 NoMapsが何かをしてくれるんじゃなくて、そこに集まる人たちの中に解決の糸口があるかもしれないということですかね?

廣瀬 うちが何かをするのではなく、何かが交わる場所というか、ステージを作るだけで、踊るのは皆さんです。

三上 一番上のこの質問はいかがですか?
「演劇で地域は活性化するのか?」

廣瀬 演劇に詳しくない私が言うと火傷するかもしれませんが、とにかく外に向かって表現するという行為ですから、「活性化」につながる可能性は孕んでいると思います。若い人たちが叩かれることを嫌う風潮があるようですね。怒られ慣れていないとか。失敗したくない。怪我をしたくないという風潮を変えて、外に向かって表現をする、チャレンジをしてくれる環境を整えたいですね。

斎藤 北海道を現場として考えて、例えば大阪のクリエーターが入ってきてもいいんですよね?

廣瀬 そうです

斎藤 演劇にも他の地域の優れたアーティストが北海道に来て、観客も北海道まで観に来る、そんな劇場環境が北海道にできればいいと思っています。

廣瀬 テクノロジーが進むと、その土地が持っている意味ってものが、ますます重要になって来ると思うんで、そこで生まれるものに、もっともっと注目すべきです。

三上 この二つの質問、二つ合わせて廣瀬さんにお答えいただきたいのですが。
「何か危機感を持って活動をしてるんですか?」
「NoMapsを始めたきっかけ、言い出しっぺは誰?」

廣瀬 危機感の話からすると、全ての人がクリエイティブであるべきとか、挑戦的だという必要はないと思っています。ただ、「やりたいんだけどなぁ」って口で言っているだけの人がいるのが勿体ない。社会を良くしようという人に対して、皆いいね!っていうくせに動かないと何も変わらないじゃないですか。だから、そこに向かって動く人がすごく大事だと思っていて、危機感という言い方かどうかわかりませんが、新しい価値を生み出そうとする層がいる方が望ましいと思っています。「言い出しっぺ」の話をすると、もともとは札幌国際短編映画祭がありました。札幌市がやってました。産業振興の一環で映像産業を盛り上げるためにやっていたんですが、文化事業としては成功したんですが、産業振興として、コンテンツ産業が札幌に生まれるほどの成果は上がりませんでした。札幌市的なニュアンスから言うと、もっとテクノロジーとか音楽とか、いろんな分野を混ぜて、クリエイティブを起点に産業が盛り上がることを目指してNoMapsが始まったというのが、札幌市的な説明です。もう一方で、北海道経済産業局からの視点で言うと、ドゥーチエっていう北海道の有識者会議がありまして、そこに音楽業界とか、IT関連の人たちがいて、その人たちがNoMapsのもととなったサウスバイサウスウエストという音楽関係のイベントを見ていて、もともとそれはインディーズ音楽のイベントだったんですけど、今では世界最大規模のコンベンションに代わっていて、オースティンという街も随分人口が増えている。こんなことが北海道でもできたらと北海道経済産業局も考えていて、その二つがたまたまぶつかって、NoMapsになったのが経緯です。そういうタイミングだったんじゃないかなぁと私は捉えています。何か新しい産業を、もっとITを含めてイノベーティブな社会を作って行くという事が生まれ始める時期に札幌が来ていたんじゃないかと。そんな時に、私が居てしまったんじゃないかと

三上 この質問はどうでしょう?
「NoMapsは儲かりますか?」

廣瀬 儲かりません。儲かることは考えていないです。大切なのは北海道の産業が元気になることです。現状ではまだそこにすら届いていません。20年でも30年でも続けて、あの時NoMapsがあってよかったねって、言われるといいなぁと思ってます。

三上 札幌に必要な〇〇は挑戦。廣瀬さんがそう言いましたが斎藤さんは?

斎藤 被っちゃったんだよね。挑戦とか、冒険とか…僕もそんな方向性を用意して、今日は来てました。ただね、いま聞いてくださっている人から上がってきたこれ
「成熟した穏やかさを備えた大人の都市を目指すということ」
まさにこういうことが言えるといいなぁって思うんですがねえ。ただ、敢えてもっと挑発できればいいかなあと今日は来ているので、一旦「成熟」とか「落ち着いた」というキーワードは棚に上げてみようかと。昔はね、もっと実現不可能な夢とか幻想を語る奴がいたんじゃないかって思うんですけど、テクノロジーがきっと未来を豊かにするんじゃないかって思ってました。今は弊害ばかりが語られて、風潮の中に何か自己規制的な堅苦しさがあるような気がするんです。途方もない、あり得ない夢を語って、実現をするためにはどうすればいいかって語るような場が札幌にあった方がいいんじゃないかという事を先月ぐらいから急に感じていて、今日は随分若い人たちにも声を掛けたら、たくさん来てくれているんですけどね。先ほど廣瀬さんのお話の中で「若い人たちが怒られ慣れていない」とか「叩かれることを恐れて新しいことを始めない」とか「指示待ち」とか「様子見」みたいな若者分析がありましたけど、実はそういう社会を作ってきたのは私の世代なのではないかって思ったんです。私はそろそろ死にゆく身ですから、これから途方もない未来を描く人たちが、それこそ地図のない未来ですか?そんな地平を描けるような社会を用意することが、僕の残り少ない余生のミッションなのではないかと、つい先日思いまして、今日はそういう着地点で来ています。

三上 廣瀬さんに、NoMapsの手ごたえは?

廣瀬 勿論あります。4年目なんですけど、NoMapsがあるならば、これをやろうかっていうような動きが、まだ多くはないですが、経済活性化の意味合いでも成果は出てきていると感じています。一つの起爆剤にはなっているんじゃないでしょうか。新しいことをみんなやっていいと、高らかにアホみたいに宣言しちゃっているので、そこになじまない人もいるとは思うんですけど、とりあえず踊るステージはできているんで、無いよりはいいと思うんです。町全体を使ったコンベンションなんで、毎年会場も増えていますし、少しずつ成長するようにもなってますし、続けて行くことで、事例も確実に増えて行くと思います。

斎藤 今度、ちょっと覗いてみますね。

三上 何か一緒にやれるといいですよね

斎藤 若い人がどんどん行くべきだよね。演劇のプロデューサーは行ったほうがいいんじゃないかなあ

廣瀬 ここに挙がっている「普通の人に知られていないのでは?」というご意見ですが、僕たちは意識的に、いわゆる尖がった人がアンテナ立てていると情報をキャッチでいるタイプの情報の出し方をしているんですね。だから認知度が低いんだと思うんです。今のままでいいとか、変わらなくていいと思う人たちには情報が届かないはずで、何とかしようと感じている人には情報は届いているはずなんです。イノベーターとアーリーアダプターと呼ばれている人たちよりも、ちょっと先を見ている人には届いているんです。ですので、普通の人に知られていないという批判には、ごめんなさいって言うしかないんですけど、そこはそんなに意識していないです。だけど、もっと知られて行かなければなりませんから、今後もっと続けてゆくしかないですよね。

三上 斎藤さんが3年前に札幌に戻って来て、札幌の演劇がどう見えているのか、これからの課題とか?斎藤さんなりの見え方はいかがですか?

斎藤 札幌で我々の先輩たちが演劇シーズンのようなことを創られて、これは東京の演劇人から見ると、この取り組みは驚異的なことなんです。最初、うちのシアターZOOと、コンカリーニョって言う2つの民間劇場だけで始めたんですよね。それをいくつかの企業の方々が支えてくださった。2回目からは札幌市も加わってくれて実行委員会ができたんです。そんな演劇シーズンも、2022年に10周年になるんですけど、恒常的に発展させて、そもそもは「札幌で100人の演劇人が食える」という状況を目指してプロジェクトがスタートしたんですが、10年前よりははるかに環境は整っていると思います。オーソドックスなものが育ち始めていると思います。王道があって、カウンターがあるはずなんですよね。サブカルチャーって、主流のカルチャーがあるからサブなんでしょ?昔はサブとかカウンターだらけだったんでね、演劇って。話は変わるけど、先日の参議院議員選挙の結果を見て呆然としたんだけど、SNSって駄目だね。自分の気分のいい人だけでつながってるわけでしょ、あれ?

廣瀬 まさに界隈性なんですよね。

斎藤 痛感しました。それだけじゃダメなんだって思いましたね。昔はアラブの春みたいにSNSが国家を動かしたりしたこともあったんですけど、今はこれだけ大衆が細かくセグメントに分かれちゃってるからね

廣瀬 先端技術ってツールでしかないので、出来ることとできないこと、または、危険なこともあるんです。どんなものでも使う側の倫理観が大事で、ロケットだって使い方を変えれば兵器ですからね。私は割と楽天的な人間なので、あまり危険性を意識はしてませんが

三上 このご意見についてはいかがですか?
「クリエイティブ、イノベーティブという言葉で何かを遠ざけているような気がする」

廣瀬 自覚してます。何かいい言葉があれば教えてください。いつも困ってます。コンベンションって何?って聞かれるといつも困るんですよね

斎藤 我々は「ワークショップ」という言葉でいつも困るんですよ。誰か早くいい日本語発明してくれよって思いながら使ってますがね

廣瀬 ビジネスコンベンションとかもそうですね、ビジネス祭なんて言いかえたこともありますし

斎藤 コンベンションって、寄り合い?

廣瀬 そうなんですけどね。悩んでいます。

三上 そろそろ時間なんですが、今回のテーマ「今札幌に必要な〇〇」斎藤さんにとって、この〇〇は?どうなりますか?

斎藤 「野心」ですかね。野心を抱き続けられる体力も必要ですが

三上 廣瀬さんは、「挑戦」ですか?

廣瀬 他の町に行って、色々な話を聞いていても、札幌の若者の新しいことにチャレンジする動きは、比較すると弱い、少ない、足りないと思います。その人の背中を見て周りの人がチャレンジする側面ってあるんですけど、誰も動かなかったら、何も起こらない。今の若者よりも、もっと若い世代が20歳になった時の社会のためにできることをできるだけやりたいと思っていて、今の若い人よりも、もっと若い人が、それよりも年上の若い人のことを見ていて、「あの人のようにやりたいなぁ」と思えるような環境を作りたいと思っています。なにか「やろう」と思えるような、気概を持っていいんだと思えるような、そんな北海道になるといいなぁと思っています。

斎藤 何か、被っちゃったよね。

廣瀬 きっと演劇だからとか、経済だからとかじゃなくて、こういう時代に生きていると、そう感じてしまうんじゃないでしょうか。ジャンルを問わず、クロスすることを増やしてゆきたいです。フォワードがもっといた方がいいので、もっともっと、悪だくみをしてゆきたいです。

三上 今斎藤さんが抱いている「野心」はどんなことですか?

斎藤 恥ずかしくて言えない。

三上 いやいや。

斎藤 やっぱりここに世界中から人が来ることかなぁ。ちゃんと基礎的で専門的な能力を持った人たちが、ここにきて、ここで創って、ここから輸出する。去年、そういう実感を得ることが出来る仕事が札幌でいくつかできたので、そういうことをこっち手動でやる。あっち手動で「あそこで創ると安く作れるぞ」ってなると植民地みたいになっちゃうんで、こっちが主導でというのが大事なんですけどね。

廣瀬 「どうやったらクロスできますか?」という質問もあったんですけど、中身にもよるんですけど、いつでもどんな話でもウエルカムというのがスタンスですので、出来る限りサポートをして北海道を面白く、済みやすく、働きやすくするための活動をやって行きますので、この後の名刺交換とか、色々喋りましょう。

三上 今日は皆さんにも、沢山、拾いきれないほどの質問やご意見を頂いてありがとうございました。今日はこの辺で終わりにしたいと思います。お二人とも、どうもありがとうございました。